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ちんのマガジン「重夫」

2026.02.17

ポリッピー

自分は4人姉弟の末っ子で曽祖父が養蚕や酪農など全ての事業をハズしたマイルド没落貴族からの再生を図る共働き家庭に生まれた。

保育園には2歳から通っていて、同い年が2人だけだったから1歳上の子達と同じクラスで集団行動をしていた。
唯一の同い年の子をパシリのように扱っていたため、最速で将来を不安視されていたらしい。

共働きで迎えが遅いから,毎日最後の1人になるまで園に残って、20時ごろに母親がジムニーで迎えに来てくれていた。

何事もない日の車内は穏やかで,問題を起こした日の車内はもちろん憂鬱で、でも今思うと良い日も悪い日も自分はジムニーに体を預けていれば家に帰ることができた。

善も悪も親に預かって貰えた時期があるというのは全ての人に共通することではないから、人生で唯一の絶対的に幸せな時間なんですかね。

そこから月日は経って27歳

最近は、ネタと称して大量の輪ゴムをばら撒き舞台上を著しく汚すなどしてお金を貰っています。

こないだ出たライブでも300人の前で舞台上のみならずライブの流れすらも著しく汚してしまった。

うんち虫とでも言うんでしょうか。

暗闇の中スタッフさんが総出で3分ほどかけて清掃してくれた。

次の香盤。大王の山内君が、俺らが撒き散らしスタッフさんが懸命に清掃した輪ゴムの塊を携え、再度舞台上にぶち撒けた。

助かる〜…と思った。

客席は破れるほどの大爆笑で、こういう時に機転を効かせてくれる同業者は、心強いし、手強いなと思った。

どうやら、山内君は我々のコンビのことも多少評価してくれているらしい話も聞く。

有り難い。

じゃあ、お互いリスペクトを持っているから仲良くなれるかと言うとこれがそうでもない。

あちらがどういう意識で自分を見ているのかは知らないし、とりあえずお互い及び腰の会話しかしたことがないし、なんとなくこれからもそんな感じな気がする。

でもこの関係性は無理がなくて自分は好きだ。

多分、山内君も俺もゴツ盛で極太のエゴを持っていると思うから、ぶつからない距離を保とうする水面下での手打ちを感じる。

じゃあ,エゴが無かったら仲良くなれたかというとそんなこともないと思う。

少なくとも自分はエゴが無かったらクソつまらなくて、2年目くらいで廃業していると思う。

エゴに足を引っ張られて、エゴを押さえ込もうとしながら,エゴに救われる人種っていうのは確実にいる。


エゴとはなんぞや。

世の中には、色んな形をした人間がいて、人を傷つけるような形をしたざらざらした人間も多くいる。

ざらざらした人間が狭い地球で食べ物着る服寝る所を確保しようとする時に、そんな形では摩擦が起きて殺し合いも起きるから,そのざらざらを削り取るために常識とかルールとかマナーとか、人を球体にするための装置が存在していてる。

でもその人間のざらざらを取り除くためのルールを守り切ろうとすると、自分と他人が同じ綺麗な球体に見えて、自分が何なのか分からなくなってしまう時がある。

自分が分からなくなった時、あわてて社会のガイドブックをめくっても自分の形を説明する図形は描いていない。

誰も教えてくれない、自分の形をなぞった時に手触りだけで浮かび上がるシルエット。

それがエゴだと思う。

一体自分は何のために生まれて何をして喜ぶか。何にイライラして何を変えようと思うのか。それがエゴの正体だと思う。

このエゴというやつは悪い言葉として使われることが多いし、友達を作る時には、なんて邪魔くさいやつなんだと思って自分の中から追い出したくなる。

芸人やるなんて目立つのが楽しいんだね?と言われると。こんな照れ症のとっつぁんキングダムに何を言うかと思う。

目立ちたいんじゃなくて、常に誰かに見られながら自分のエゴの形を教えて欲しいからなんじゃないかと思う。

エゴは宿主に己を覗かれることを酷く嫌うから、目前の人間には良く見えるけど,自分からは見えない死角に隠れようとする卑怯な性格の持ち主だ。

この一筋縄ではいかないとても邪魔くさいエゴという奴に悩んで、それでもエゴと付き合う覚悟をじわじわと決めて、エゴに救われたり苛まれたりして生きていく。

エゴが原因で園で問題を起こした時、俺は悪くないよね?と親の顔色を伺うと、怒られり、慰められたりしながら夜道で野犬に噛まれないように家まで送ってくれる。

でももう親はいなくて、運転席に座っているのは自分で、助手席ではエゴが偉そうにふんぞり返っている。

恐ろしいくらい面白い後輩コンビが出てきて、そいつらと結構スタイルが被ってた時。

狼狽えた瞳で俺は悪くないよね?って周りを見渡しても、後続の才能に注目が移ろう大衆の中から母親が現れて手を引いてくれることはもう無い。

オーケーオーケー。

どうすればいいかは難しいけど、自分のざらざらを撫でていれば、エゴが不機嫌そうに顔を出して、あっちへハンドルを切れと教えてくれる。

腹に力を入れて、エゴを諌めながら、エゴの力を借りて、協力者と睨み合うことから始めてみる。

大丈夫。大丈夫。

自分はもう面白いものを作れないんじゃないかという恐怖心を新鮮に持っている限り、面白いものは作れると思いますからね。


今日も面白いネタはできなさそうだと、ベッドに潜り込む。

まどろんでいると見覚えのある景色。

ジムニーの中で黒糖パンを齧りながら眺める車窓の奥の暗闇に、街灯がポツリポツリと不均一な間隔で並んでいる。

段々明かりのついたマイスイートホームが近づいてきて、あぁここは自分の帰るべき場所だと思う。

すると突如、カンカン照りの舞台上が現れて!!

前の出番の演者がボカスカ発光している!?


beautiful season・:*+.\(( °ω° ))/.:+



ポリッピー

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